錫の食器に興味を持っている方から、においについて心配があるというご相談をいただくことがあります。金属製の食器を使っているとにおいがしてきて嫌だから、ガラスや陶磁器などを選んでいるという方もいらっしゃるでしょう。
エテナの製品ではタンブラーやぐい吞み、ショットグラスなどの酒器がほとんどです。お酒を飲むときには繊細な感覚で楽しみたい方も多く、金属臭が気になるから金属製の酒器を選でも大丈夫なのかが悩みになるのでしょう。
錫製品にも独特のにおいがありますが、決してお酒の味を損なわせるようなことはありません。この記事では一般的に言われる金属臭の原因や、金属の特有のにおいの実体をご紹介します。
においが気になったときにも気軽にできる対策をご説明しますのでぜひ参考にしてください。
そもそもの金属臭の原因
ステンレスなどのよく食器や酒器に用いられている金属は、長く使っていると金属臭がしてくることがよくあります。金属臭はとても不快なにおいなので、におってきたらすぐに買い替える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
金属臭はなぜ出てくるのでしょうか。まずは金属臭の原因と実体について詳しく見ていきましょう。
不快なにおいの原因は主に「鉄」と「皮脂」
ステンレス製の食器から出てくる不快なにおいの原因は「鉄」と「皮脂」です。ステンレス製品だけでなく鉄の製品なら何でもよく出てくる金属臭で、例えばキッチンのシンクや学校や公園にある鉄棒などからも同じにおいがしているのに気付いたことがあるでしょう。
ステンレスは鉄とクロムから作られている合金で、主成分は鉄です。鉄の安定性を向上させるためにクロムを合わせていると考えてください。
鉄自体にはにおいがありません。鉄が持っている触媒作用によって、私たちの手についている皮脂に含まれる脂肪酸の一種が化学変化を受けることで金属臭が発生します。
鉄特有の不快なにおいの原因物質は「1-オクテン-3-オン」と言われる物質です。穏やかな揮発性があるので、少しにおい物質ができてしまうとずっとにおいを発し続けてしまいます。
金属臭は私たちの手と鉄が生み出しているものなので、金属製ならにおいが出るというわけではありません。シルバーの食器や銅の酒器なども金属臭がつらいということはなく、錫製のタンブラーやぐい吞みについてもいわゆる金属臭が出てくることはないのです。
錆びた金属からも嫌なにおい
金属が錆びることで金属臭が発生しやすくなります。古くなったステンレス製の食器は新しい食器に比べてにおいが強いことはよく知られています。
ステンレス製品は錆びにくいように鉄をクロムとの合金にしたり、表面加工をして錆びにくくしたりしているのが一般的です。しかし、使用していると傷が付いて錆びやすくなってきてしまいます。
錆びは空気中に含まれている酸素が金属を酸化してできるものです。鉄は酸化鉄になって赤褐色になり、赤錆とよく言われています。
錆びた鉄は触媒作用が強くなり、皮脂からにおい物質を作るスピードが上がります。そのため、古くなったステンレス製の食器は嫌なにおいがするようになりがちです。
錆びてしまうと他の金属でも嫌なにおいが出てくる場合があります。この場合にも酸化された金属が皮脂などに化学変化を起こし、不快なにおい物質にしているのが原因です。
錫からは鉄が錆びたようなにおいはしない
錫は鉄のように錆びたような金属臭が発生することはありません。金属は種類によって大きく性質が異なり、錫は鉄とは全く違う特性を持っているからです。
錫は日常の使い方では錆びにくい
錫は金や銀と同じように安定性が高い金属です。空気中の酸素によって酸化されるのが極めて遅いので、日常の使い方で錆びが問題になることはまずありません。
スズは全く酸化されないというわけではありませんが、酸化されてできた酸化錫も無色透明でにおいもありません。そのため、鉄器や傷のついたステンレス製品のように錆びたのが原因で不快なにおいが出てくることがないのです。
錫はにおい物質を作らない
錫は鉄などのようににおい物質を作るような触媒作用を持っていません。錫製の酒器を持ったときに指先から皮脂が付いてしまったとしても、錫ならにおい物質ができないので不快なにおいが発生しないのです。
むしろ錫には浄化作用があると言われていて、におい物質の種類によっては分解してくれる可能性もあります。錫器はお酒を飲むのに適していると昔から言われてきました。
天皇陛下がお屠蘇を飲む際にも錫製の酒器が用いられてきたという歴史があります。においによってお酒の邪魔をすることがなく、むしろ浄化して新しい年を迎えるときにふさわしい酒器と言えるでしょう。
錫の独特なにおいが風味を際立てる
お酒を飲むときに錫の酒器が使われ始めたのは古代です。錫は独特なにおいを帯びているのが特徴で、お酒の風味を際立ててワンランク上の美味しさを引き出す力を持っています。
金属は個性的な香りを帯びている
錫に限らず、ほとんどの金属は個性的なにおいを持っています。金属によっては全くにおいがないという場合もあり、金はその代表例として知られています。
あまりにも安定な金属なので、何が触れたとしてもにおいの原因になる物質が全く出てこないのです。ただ、金属が帯びている個性的な香りはプラスにもマイナスにもなります。
いわゆる金属臭のように不快感をもたらすにおいもあれば、心地よい感じをもたらしてくれる芳香もあるからです。鉄の生み出すにおいは嫌悪するのが当然ですが、スズはむしろ華やかで好ましいと感じる人が多い香りを帯びています。
錫はほんのり甘くてフル-ティー
錫の持つ独特の香りは実際にかいでみないとなかなかわかりづらいものです。錫のにおいの表現にはいろいろありますが、「ほんのりと甘い香りがする」というのが多くの方が共感する表現です。
人の感性を言葉で表現するのはとても難しいので、ちょっと違うと言う方もいると思いますが、エテナの利用者からも同じ感想が多くなっています。錫の香りの別の表現としては「フルーティーな感じ」「果実感がある」「芳醇で軽やか」といったものがあります。
共通しているのは「甘さ」や「フルーツ」をイメージさせることです。また、押してくるような強いにおいではなく、香るような気がするという程度の穏やかな香りという点も共通しています。
微かなにおいが香りを引き立てる
酒器として決してお酒の風味に強く干渉することがなく、あくまで引き立て役に回るのが錫製品です。特に相性が良いのが日本酒ではないでしょうか。
日本酒の原料は酒米ですが、お酒を醸した後にはバナナやブドウ、青りんごや洋ナシなどを思わせるようなフルーティーな香りを帯びている日本酒になります。錫製の酒器はその香りをさらに引き立たせて、ワンランク上の日本酒にしてくれるでしょう。
錫製品には微かなにおいによって口にした食べ物や飲み物の香りを引き立てる力があります。特に飲み物はダイレクトににおいが伝わってくるので引き立て効果も大きくなります。
日本酒に限らず、ビールや焼酎などのお酒を飲むときには錫器を使うと美味しさが増すでしょう。ただの水でも錫製タンブラーで飲んだ方がおいしいという方もいます。
人の感性は繊細なので、錫が発するわずかな香りを感じ取って水すらもランクアップさせているのです。
においが気になる方のための金属臭対策
エテナは錫製ですので鉄の金属臭を発生させるようなことはありません。ただ、錫製品でも不純物の影響でにおいが気になるようになることがあります。
スズが問題なのではなく、他の原因で金属臭が出てくることもあるので、ここでは金属臭対策について簡単にご紹介します。
こまめに洗うだけでもにおいは和らぐ
金属臭の原因は主に「鉄」と「皮脂」です。ステンレス製で錆びが少し出てきてしまっていても、皮脂がなければにおい物質ができないので金属臭は発生しません。
つまり、食器をこまめに洗ってきれいにするだけでもにおいは和らぎます。
お酒を飲んだタンブラーなどを洗うときに水で流すだけにしていないでしょうか。油汚れがないから水洗いで十分と思うかもしれませんが、人の指や口にある皮脂は付着しています。
皮脂は水だけではほとんど洗い流せません。皮脂はほとんど色がないので見た目はきれいになるでしょう。しかし、実際には皮脂がたくさん付着していて、鉄の触媒作用によってにおいが出てきてしまうのです。
エテナのような錫器なら鉄が含まれていないから大丈夫ではないかと思うかもしれません。しかし、洗い物をするときには他にステンレス製品があったり、シンクがステンレス製だったりするのではないでしょうか。
ステンレスに傷がついて微細な破片が錫器に付着すると、錫器に皮脂が付いていたらにおいが出てきてしまう可能性があります。錫自体はにおい物質を作りませんが、他のところからにおいが付いてしまうことがあり得るのです。
中性洗剤で洗えば皮脂もきちんと落とせます。使用した食器は全て中性洗剤で洗う習慣を作って金属臭対策をしていきましょう。
中性洗剤に漬け込むとにおいが抜けやすい
金属臭がしてきてしまったときには中性洗剤で洗うだけでは落ちないこともよくあります。こまめに洗っているとだんだんとにおいがなくなる場合もあり、錫製品の場合には付着している微細な鉄や表面に吸着されたにおい物質が原因のことが多いので洗ってうちに気にならなくなっていくでしょう。
ただ、ステンレス製の場合にはそれ自体が次々ににおい物質を作り出しているのでにおいがなかなかなくなりません。金属臭がするステンレス製品と錫器を一緒に洗っていると、においが移ってしまってにおいが抜けないこともあります。
このようなときには中性洗剤に漬け込むのがおすすめです。中性洗剤を半分くらいに薄めたところに錫器を入れて、30分くらいしたらきれいに洗い流しましょう。
ひどくにおいが移ってしまっていた場合でも、2回か3回繰り返すだけでにおいが抜けます。ステンレス製品にも効果的な方法なので、困ったときにはぜひお試しください。
重曹で磨くのも金属臭対策になる
金属臭には重曹で磨くのも効果的です。皮脂は脂肪酸と呼ばれる酸性の物質なので、アルカリ性の重曹を使うときれいに落とせます。
重曹水で洗うだけでもにおいが和らぐことが多いですが、エテナなら重曹で磨くのがおすすめです。 重曹に中性洗剤を少量加えて練り、ペーストにしたものを使って柔らかいスポンジで磨くと錫器はとてもきれいになります。
エテナならではの金属光沢にも磨きがかかるのでおすすめです。重曹を使うことで付着しているさまざまな汚れを取り除くことができ、金属臭以外のにおいの原因物質もなくなるでしょう。
中性洗剤も同時に使うことでにおい物質も取り除けます。重曹の力は優れていて、錫が劣化してしまうようなこともありません。金属臭が気になったときには重曹で磨いてみましょう。
金属臭が出てこないようにお手入れをしよう
金属臭が発生するのはお手入れ不足が原因のことがほとんどです。傷を付けないように普段から丁寧に扱うようにしつつ、使用後は丁寧にお手入れをしていきましょう。
以下のページでお手入れの仕方も詳しく紹介していますので、錫製品のお手入れについて気になる方はぜひご覧ください。
まとめ
錫も他の金属と同じように独特のにおいを帯びていますが、においというよりはかぐわしい香りです。お酒や水の美味しさを引き立てるので、錫器は古代からずっと愛されてきています。
不快な金属臭の原因は私たちの手や口に付いている皮脂が鉄の触媒作用によって化学変化を起こすことによって生み出されています。錫にはこのような作用がないので不快なにおいが出てくることはありません。
それでも他のステンレス由来の鉄が付着することでにおいが気になるようになることがあるかもしれませんが、お手入れの仕方が万全とは言えなかったのが原因のことがほとんどです。中性洗剤を使ってお手入れをこまめにしていればにおい対策は大丈夫です。
エテナはお酒も水も引き立てることができます。お好みに合う製品を選んで長く使っていただければ幸いです。