お手入れ方法
錫製品を美しい姿のまま、長く使用していくには日常的な手入れをすることが大切です。
錫製品や銀製品ほどに慎重はお手入れは必要がありませんが、ステンレス製品に比べると注意した方が良いポイントがたくさんあります。
木製の器や陶磁器などと手入れの仕方に違いがありますので、どのようなお手入れをしたら良いのかを詳しく紹介します。
特別なお手入れ方法があると聞くと、錫製品の使用は大変と思うかもしれません。
実際には特に難しいことはないのですぐに慣れてしまいます。
初めてエテナを使用するときに一通り確認し、汚れが気になったときなどにチェックしてから手入れをするようにすれば大丈夫です。
ここでは錫製品の日常的な手入れから、汚れがひどいときの手入れまで、幅広く場合分けをして紹介します。ぜひ、今後の錫製品のお手入れの参考に活用してください。
ご使用後の錫器のお手入れ
錫器で飲食を楽しまれた後は通常の食器と同じように洗って保管するのが基本です。錫は金属として軟らかいのが特徴で、傷がつきやすい点には注意して洗いましょう。
ここではご使用後のお手入れに使用する洗剤、スポンジ、水に着目して選び方を紹介します。洗うときのポイントも具体的に説明するので参考にしてください。
この洗い方はステンレス製の食器や陶磁器などもきれいにできます。お手入れの標準的なやり方として取り入れていくのがおすすめです。
錫器のお手入れに使う洗剤の選び方
錫器は一般の食器に使用する台所用の中性洗剤を使って洗えば大丈夫です。
強力なアルカリ性の洗剤は頑固な汚れを落とすのに用いられる場合がありますが、錫製品に対しては厳禁です。
弱アルカリ性や弱酸性の洗剤も錫を傷める可能性があるので避けた方が良いでしょう。

また、クレンザーのように研磨剤が入っている洗剤は傷がつきやすいので日常的には使用しないのが無難です。一般的な食器用の中性洗剤を選べば錫製品のお手入れに使えるので、特に心配しなくても問題ありません。
錫器を洗うのに使うスポンジの選び方
スポンジは柔らかくて傷がつきにくいものを選びましょう。
表面を触ってみるとざらざらとしていたり、とげとげしている部分があったりするスポンジは避けるのが適切です。
油汚れを水だけで落とせるとされているスポンジの中には、傷をつけやすい表面加工が施されていることがあるので注意が必要です。

タワシのように先が鋭くて固いものも錫器には適していません。
金属タワシなどの金属製のものも傷をつける原因になるので避けましょう。
特に高級なスポンジを用意する必要はありません。柔らかくてざらつきがないスポンジを選び、錫器を労わるようにして洗うのが良い方法です。
お手入れに使う水の選び方
錫器は融点が低い性質を持っているため、お手入れのときにはぬるま湯で洗うのがベストです。
常温の水道水でも問題はありませんが、ぬるま湯の方が汚れをよく溶かすのできれいになります。
中性洗剤も流れやすいので、人肌くらいのぬるま湯を使用しましょう。
食器の汚れを落とすときには熱湯を使用する場合がありますが、錫器は熱に強くないので熱湯の使用は避けましょう。
沸騰しているお湯でも錫の融点よりは低いのは確かです。しかし、表面加工が傷むリスクがあるので、触れないような温度のお湯は錫製品には使用しないようにしましょう。
錫器の洗い方の注意点
錫器を使用したら、できるだけ速やかに洗うと汚れが付きにくくなります。
スポンジに中性洗剤を付けて軽くこすり、汚れが落ちたらぬるま湯で洗い流します。そして、水分を柔らかい布巾で拭き取って乾かせばお手入れは終わりです。
錫製品を洗うときには他の食器とは別にするのがおすすめです。自分の爪で傷が付いてしまうこともあるほど、錫は軟らかい性質を持っています。洗っているときに他の食器とぶつかって傷が付くリスクがあるので、錫製品だけ別にして洗いましょう。特にフォークやナイフなどの鋭利な部分がある食器とは分けるのが安全策です。
汚れがひどい場合のお手入れ
錫器の日常的なお手入れを欠かさずおこなっていたとしても、だんだんと汚れが付着してきてしまいます。錫は通常の環境下では錆びてしまうことはありません。
変色が見られたときには汚れが錫器の表面に付着してこびりついている状態です。中性洗剤と柔らかいスポンジだけでは落ちない汚れのお手入れもご紹介いたします。
汚れがひどくなる原因
錫器の日常的な手入れをしていても汚れが落ちなくなるのは、飲み物や食べ物の色素成分が錫の表面に強く付着してしまったからです。
陶磁器やステンレス製品でもコーヒーの色がついて落ちなくなったり、茶渋が付いたりすることがあるでしょう。同じように錫器の場合にも色素の付着による変色が起こります。
コーヒーや紅茶、ジュースやワインなどの色が濃い飲み物をずっと入れたままにしていたり、洗わずに乾かしてしまったりすると変色しやすくなります。

また、中性洗剤をきちんと洗い流せていなかったり、洗った後に水分を柔らかい布で拭きとっていなかったりした場合にも汚れやすくなります。ホコリやチリの付着や水垢の発生が主な原因です。
さらに、錫税品の表面に小さな傷が付くと汚れが入り込みやすくなります。目に見えないような小さな傷でも色素成分が入ってしまい、スポンジでこするだけでは落ちにくくなるので注意しましょう。
小さな傷によって汚れやすくなるのは錫製品に限ったことではありません。ステンレス製品などでも同じです。普段から大切に扱うことが美しい錫器の姿を保つことにつながります。
練り歯磨き粉でのお手入れ
錫器の着色が目立ってきたときには練り歯磨き粉を使用してお手入れをしましょう。練り歯磨き粉は歯をきれいにするための洗浄成分や研磨剤、歯周病などの予防成分や香料などが含まれています。
フッ素系の歯を強くするための成分や、歯を白くするホワイトニングを重視した成分が含まれている製品も多くなっています。
練り歯磨き粉には研磨剤が含まれているので錫製品を傷付けるのではないかと不安になるかもしれません。
しかし、錫と同じように軟らかい歯を傷付けてしまわないように繊細な研磨剤が用いられているので大丈夫です。他の成分についても錫を変質させることはないので、練り歯磨き粉はお手入れに安心して使用できます。
練り歯磨き粉を使うお手入れ方法は、素手、または軽く湿らせた柔らかいガーゼに練り歯磨き粉を取り、汚れが気になっている部分を磨くだけです。
ガーゼを指に巻いて少し強めにこすって落とすと良いでしょう。爪で傷を付けないように注意する必要がありますが、いつでも気軽にできる手入れの仕方です。

錫器を練り歯磨き粉で手入れをしたときには、練り歯磨き粉をぬるま湯で流します。そして、中性洗剤で洗って練り歯磨き粉に含まれている成分や汚れを洗い流しましょう。
水分を拭き取って乾燥させたらお手入れは終わりです。
重曹でのお手入れ
錫器の汚れが目立ってきたときには重曹を使ってお手入れするのも効果的です。お掃除のときに重曹を使っている方もいるでしょう。
重曹は弱アルカリ性で、油汚れも落とせることからキッチン台やシンクの掃除にも使用されています。
重曹でお手入れをするときには中性洗剤を併用するのがおすすめです。
重曹に少量の中性洗剤を加えて練り合わせるとペーストができます。練り歯磨き粉よりもやや固いペーストに仕上げると汚れを落としやすいでしょう。
重曹のペーストを柔らかいスポンジやガーゼに付けて錫器を磨きます。
丸を描くようにしてこすっていくと汚れが落ちやすく、傷もつきにくいのでおすすめです。重曹のペーストには研磨作用があるので、優しく全体を均一に撫でるようにして磨きましょう。
錫製品の全体を磨き終えたら速やかにぬるま湯で流します。重曹は弱アルカリ性なので、長時間にわたって錫に付けていると白く色づいてしまう場合があるからです。
お手入れにあまり時間をかけずにさっと終わらせるようにするのがコツです。
重曹でのお手入れをしたら、最後に中性洗剤で洗い流します。水分を拭き取って乾燥させたら錫製品のお手入れは完了です。
光沢が鈍くなった場合のお手入れ
錫は光沢が美しいのが魅力です。エテナは錫の鏡面加工にこだわり、金属光沢の美しさを感じ取ってもらえるように仕上げています。
錫の光沢が鈍くなってきてしまうと美しさも半減してしまいます。
弊社にお問い合わせいただければ美しく磨き直しますので気軽にご相談ください。
ここでは、ご自身でも簡単に錫製品の光沢を取り戻すためのお手入れ方法も紹介するので参考にしてください。
光沢を出すための基本のお手入れ
光沢が失われてきたときには錫の表面を磨くのが効果的です。柔らかい布を使って錫の表面をよく擦ってみましょう。柔らかい布ならかなり強く擦っても新たに大きな傷ができてしまうことはほとんどありません。
爪を立ててしまわないように気を付けつつ、しっかりと錫製品を手に持って擦ってみましょう。

多少の汚れや傷で錫の光沢が失われてきていた程度なら、この程度のお手入れで輝きを取り戻します。ちょっと気になったときに磨く習慣を作ると、いつも美しい姿を見せてくれるでしょう。
磨いた後は汚れが表面に浮いていることがあります。中性洗剤で洗って水分を拭き取り、錫の表面に出てきた汚れをきれいにするのがおすすめです。
光沢を出す研磨によるお手入れ
柔らかい布でのお手入れでは錫の光沢が出てこない場合には研磨をする必要があります。金属の表面を鏡面にするときによく用いられている「ピカール」という研磨材を使用するのがおすすめです。
ピカールはプロの金属加工職人も使用している研磨材で、ステンレスや鉄、真鍮や銅などにも用いられています。業務洋品店だけでなく、大きめのホームセンターでも販売されていて、インターネット通販でも手に入れることが可能です。
ピカールは液体の研磨材なので、柔らかい布やスポンジに付けて擦るだけで錫製品のお手入れができます。ピカールで磨いたときには布を別に準備しておいて、ピカールで磨いた後にまず布で成分を拭き取りましょう。十分に美しい光沢が出ていない場合には、再度、ピカールが付いている布で磨きます。
この作業を繰り返していき、納得できる美しさになったら錫器を洗って仕上げます。ピカールによる研磨は微細な傷を滑らかにして消してしまえる場合もあります。「最近、お気に入りの錫器が汚れやすくなってきた」というときにもピカールで研磨すると良いでしょう。
ピカールにはオイル成分も含まれているので、水洗いだけではきれいに落ちません。中性洗剤を使って軽く擦り、ピカールと汚れをまとめて落とすのが大切です。洗った後は水分をよく拭き取り、満足な光沢が出ているかをチェックしましょう。
錫製品を使用する際の注意点
ここまで錫製品のお手入れ方法をご紹介してきました。錫製品を美しい姿のまま使用していくためには日常的なお手入れを心がけるのが大切です。
お手入れと合わせて錫製品には使用方法の注意点もあります。ここでは錫の食器を初めてご使用になる方のために、特に注意しておいた方が良いポイントをまとめました。
・食器洗浄機を使用しない
・電子レンジを使用しない
・オーブンや直火にかけない
・冷凍庫に入れない



錫は軟らかくて融点が低い金属です。食器洗浄機に入れると他の食器や食器洗浄機のかごとの接触で傷付く可能性があります。電子レンジを使うと火花が散るリスクがあるので現金です。
オーブンや直火では高温になるので錫が変質するリスクがあります。また、低温にもあまり強い金属ではないので冷凍庫に入れるのは避けましょう。
冷蔵庫に一時的に入れる程度なら問題ありません。ただ、冷蔵庫に入れっぱなしにせず、きれいにお手入れをした状態で食器棚に保管するのがおすすめです。
最後に
錫製品は錫の特性に合わせたお手入れをするのが大切です。軟らかくて高熱に弱い金属なのが錫の特徴なので、傷を付けないように大切に扱っていきましょう。
日常的には使い終わった後に中性洗剤を使って柔らかいスポンジで洗い、水分を拭き取って乾かすだけで大丈夫です。
他の材質の食器とほとんど同じようにしてお手入れができるので安心して使っていきましょう。
また、練り歯磨き粉や重曹、ピカールなどを使用すれば頑固な汚れも落とせます。微細な傷や光沢の鈍りも解消できるので、ご自身のお手入れで美しい錫器の姿を保っていけます。
自分でお手入れをしていると愛着も湧いてきます。錫器は一生使えますので、今後を共にする逸品をエテナで見つけていただければ幸いです。